レビュー:
『スーパー地球人土方・救いなき乙姫たちに愛の手を!』
ギンタマニアにとってこの夏最大の話題となった「竜宮編」。毎年この時期の長編は人として考えさせられるテーマをもってくる。まさか「友情・努力・勝利」の三是をもつ「ジャンプ誌」において、「老い」について考えさせられるとは思っていなかったろう。ゲーム性が強いケレン味を帯びた作品が軒を連ねる「ジャンプ」にあって、一見陳腐なギャグ漫画の体裁をとりながら、人間ドラマとしてスケールの大きさを感じさせる「銀魂」は異彩を放っている。
しかも単なるバトルマンガとは一線を画し、「竜宮編」に限れば、「加齢促進」という事態だけで血も死者も出していない。むしろ、主人公側から犠牲者を出すことで、物語の深刻さとともに、老人という見た目がもたらすコミカルさを出すことに成功している。もはや漫才の域に達した銀さんとヅラのやりとりは白眉といえるだろう。
この作品をみて、高杉登場編となった第17話を思い出す。高杉の蛮行以上に源外の心の闇の部分をクローズアップしたトピックは短編ながら印象に残る作品だったが、本編は乙姫のいわば心の闇に迫った作品なのだ。本来ならば敵対し、滅ぶ側にある乙姫を最大の被害者として描いている点は評価に値する。「老い」は避けられない。だが、老いることは決してマイナスではないことを我々に訴えかけているような気がする。市井の人となった乙姫が最後に見せる笑顔こそ、その答えであるような気がする。
さて、本作最後に収録される土方の煙草を求める旅も印象的な回である。なぜか「DBZ」の世界観となり、それが「銀魂」の世界観と見事にマッチしている。安易なパロディに走らず、「DBZ」のバトルマンガとしての本質をうまくついており、完成度としては高い方の部類に入るだろう。しかも、それに華を添えるように土方以外の「銀魂」レギュラー陣が別の役で登場しており、声優陣の芸達者ぶりとスタッフの遊び心に感心させられること間違いなしである。