レビュー:
『今年も灰色? バージョンアップ版を用意してくれ!』
2007年10月、ようやく“2006”ツール・ド・フランスの総合優勝者がペレイロであると公式発表がされた。
とすると、現在多くの人の手元にあるランディスがジャケットを飾る2006年のDVDは何なのだろうか?
そして2007:ツール・ド・フランス、開始前から不穏な雲行き。
実力ナンバー1と見られるバッソは、結局オペラシオン・プエルト(2006年に起こった大規模なドーピング事件)への関与を認めレース活動停止、1996年の優勝者リースは、当時ドーピングの常習者であることを告白、スプリント賞6回のツァベルも薬物を試したことを認めた。引退した選手からの告発等も相次ぎ、自転車レース界の薬物使用がただならぬ状況であることを世間に知らしめた。
そして2007ツールは、実際にそのような状況を反映するものとなってしまった。
優勝候補ナンバー1のヴィノクロフは落車のダメージで早々に優勝戦線脱落、以後2回の区間優勝を飾るがドーピング検査で陽性となりレースから排除。
過去2年山岳賞のラスムセンは、登坂での強さに一層の磨きがかかり、苦手だったタイムトライアルでも格段の進歩を見せ、マイヨジョーヌはほぼ確定かと思わせたが、レース中盤にツール主催者より「自身の所在地を偽り、ドーピング検査逃れの行為をしたラスムセンはツールにふさわしくない」と名指しで物言いを付けられる。そしてその数日後「チームの規定に違反した」との理由でラボバンクチームから強制的に出場停止、当然レースはリタイアという結果となった。不可解な処置だが、ドーピングの可能性が強いラスムセンに対し、チームが見切りを付けたというのが、もっぱらの噂だ。
波乱の末、パリの表彰台で頂点に立ったのはコンタドールだが、正直マイヨジョーヌの色が黄色に見えない。理由は2つある。まず1つめはコンタドールが2003年のプロ入りから数年間所属したチーム、監督のサイスはドーピング事件ではっきりクロと判定された人物。2つめは現在所属するのがディスカバリーであること。ディスカバリー(旧USポスタル)は入団すると急に強くなり、退団するとドーピング検査に引っかかる選手が多い。典型例はハミルトンやエラス。アメリカの進んだ医学・薬学がヨーロッパのドーピング検査をすり抜けているという黒い噂は根強い。
現時点では優勝コンタドール、2位エバンズ、3位ライプハイマーとなっているが、来年の今頃はどうなっているかさっぱり分からない。もし順位に変動があるようなら、メーカーはぜひバージョンアップ版を出してほしい。失格選手にスポットが当たった映像ソフトを持ち続けるなど虚しいばかりだ・・・