レビュー:
家庭の機能不全。背信行為。裏切り。下品な悪態。容赦のない暴力。なまなましい(そして時に暴力的な)セックス。「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のことではない。HBOの猛烈に野心的な作品[ローマ]だ。「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」がキャメロットの名声を汚したのと同じくらい残酷にローマの栄光を血みどろにした(しかもモンティ・パイソンよりもずっと笑いが少なく、おもしろいこともほとんど起こらない)。時代は紀元前(ケーブル以前)52年。元老院リーダーのポンペイウス・マグナス(ケニス・クラナム)とユリウス・カエサル(キアラン・ハインズ)は、以前は友人同士であったが、カエサルがゴールを征服し、8年ぶりに戻ってくることになって、ローマにおける2人の力関係に大きな変化が生じ、支配階級は武装を始めた。ローマの中心部では、思いがけず人びとの英雄になった2人の兵士の間に奇妙な友情が生まれていた。ルキウス・ヴォレヌス(ケヴィン・マクキッド)は結婚しており、高潔でしっかりとした人物。ティトゥス・プッロ(レイ・スティーヴンソン)は道徳を何とも思わない悪党で、その哲学は「俺は敵を殺し、そいつらの金を奪い、そいつらの女を楽しむ」という言葉に象徴されている。[ローマ]の中でも特に興味深いサブプロットのひとつは、ルキウスと妻ニオベ(インディラ・パーマ)との緊迫した関係だ。ニオベは夫が生きて帰ってきたのを見て驚く(しかしもっと驚いたのは妻が生まれたばかりの赤ん坊を抱いているのを見たルキウスのほうだった!)。[ローマ]の陰謀や策謀、そしてだれが英雄でだれが敵なのかという謎に混乱した視聴者も、ゴールデン・グローブ賞候補のポリー・ウォーカーがカエサルの手ごわい姪であり長年の敵であるアティア役で登場すれば、すべて忘れてしまうだろう。最初の1時間だけで、彼女はすでに結婚している自分の娘を、妻を亡くしたばかりのポンペイウスに花嫁として差し出す。彼女が次に何を(だれに)するのか気になって仕方なくなり、最終エピソードで彼女が受ける当然の報いを予想するようになる。
[ローマ]は丹念に造りこまれた作品で、エミー賞の衣装賞、セット・デザイン賞、美術監督賞など8部門にノミネートされたのもうなずける。マイケル・アプテッド(「歌え! ロレッタ愛のために」の監督)は、ファースト・エピソード「失われた鷲」でアメリカ監督組合賞に輝いている。しかし芸術的な評価はともかく、あっという間にはまってしまった視聴者は、アティアのこの言葉にうなずくだろう。「わたしは秘密が、陰謀が大好きなの。これほどスリリングなことはないわ」(Donald Liebenson, Amazon.com)