レビュー:
『息も吐かせぬ怒濤の展開。』
『犬とオオカミの時間』
このタイトルが作品を上手く象徴していると思います。
昼と夜の狭間、犬かオオカミか見分けのつかなくなる夕暮れ時。
それはつまり、善悪の境界が曖昧になることの喩えです。
本国では2007年7?9月に放送された、ノワール系のアクションドラマ。
次から次へと展開するテンポの良い脚本は全16話。
ノンストップで主人公を襲う劇的な運命の罠に、
最後の最後まで一話たりとも目が離せない衝撃の佳作でした。
リアルタイム視聴時、「え!うそ!ここで終わり!?( ̄△ ̄;)」と、
気持ちが逸って続きを待ち切れない思いを何度も味わったので、
これはもう、一気にまとめて見るのがオススメです。
数奇な運命をたどる主人公は実質3役・・・いや、見ようによっては4役にも5役にもなるかも。
演技者としては相当難物でしょうが、その分とても魅力的な役どころです。
人物相関の変遷に伴うキャラクター展開が、実にドラマチックです。
真面目で有能、強く優しいけれど、ひとたび激昂すれば容赦なく、
孤独な影を負っていて、ときには小さな子供のようでもあり、
片やクールでシニシカルだったり、残酷な一面も。
そんな主人公の復讐劇を軸に、恋が絡み、友情が描かれ、親子、家族、
登場人物それぞれが持つ、様々な情が物語を複雑に織り成します。
脇役に至るまで実力のあるキャストで固められ、見応えがありました。
カーチェイスあり、撃ち合いあり、生身のアクションあり、演出も派手です。
手に汗握るスリリングな画面は、ところどころ映像が映画のようでした。
けれどその中に描かれる、感情の機微もみどころです。
主要登場人物の殆どが、必ず何らかの形で切なくやりきれない思いを抱えています。
散りばめられた謎と、その怒濤の展開ゆえに、幾度となく息が止まりそうになったドラマです。